給水用防錆剤について

1.はじめに

給水用防錆剤とは建築物等の給水給湯に注入して配管や設備の腐食の抑制と赤水の発生を防止する目的で使用する薬剤をいう。
 適用に当たっては現用の給水(給湯)設備をそのまま使用して、注入装置を付加するだけでよく、工事量も少なく、給水(給湯)の中断もごく短時間で、経費も多額を要しない。
 しかし、人が日々消費する生活用水に添加するものなので、衛生的見地から大きな制約を受け、健康に影響がなく、しかも効果を発揮するものでなければならない。
 これらの点から給水用防錆剤はリン酸塩と、ケイ酸塩、及び両者の混合物に限定され、注入方法、含有率(濃度)、品質規格等、国の定める使用基準がある。

2.給水用防錆剤が使用される建築物

 給水用防錆剤は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管理法)施行令に定める特定建築物の他、給水設備を有するすべての建築物及び各種給水施設等で使用され得るが、具体的には表−1の如くである。
表−1建築物の種類
建築物の種類
特定建築物
(ビル管理法)
簡易専用水道
(水道法)
小規模給水施設
分類基準 延床面積3000m3以上で特定用途に該当する施設 受水槽の有効容量が10m3を超える施設 ビル管理法にも水道法にも該当しない貯水層をもつ施設のすべて
水質検査 6ヶ月ごとに1回 異常を認めたときに必要な項目について行う 簡易専用水道に準ずる
これらの建築物において、給水用防錆剤を使用する場合、直接関与する法令は周知の通り、ビル管理法であり、特定建築物がその対象となるが、日本給水用防錆剤協会では、ビル管理法第4条第3項でいう「特定建築物以外の建築物であっても多数の人々が使用、利用するものについては、この法律による管理基準に努めなければならない」という規定を遵守し、特定建築物以外の建築物においても同様対象としている。

3.給水用防錆剤の種類と品質規格

 給水用防錆剤には国の定める種類と品質規格があり、その主成分から表−2の如く、リン酸塩系、ケイ酸塩系、及びリン酸塩とケイ酸塩の混合系の3種類に限定され、さらにこれらは使用される形態からみて、常温において液体状と固体状(塊状、片状、球状、粉状)に分けられる。この規格は、飲用水に使用する給水用防錆剤としての安全性が確認され、それに基づく使用基準(注入方法、含有率(濃度)と管理等)が策定されたことによるものである。
表−2 給水用防錆剤品質規格
種類 1種 2種 3種
項目 1号 2号 1号 2号 1号 2号
主成分 リン酸塩
五酸化リン(P2O5)として
51%以上かつ表示値±1%以内 11%以上かつ表示値±0.5%以内 両成分を合計して51%以上かつ表示値±1%以内 両成分を合計して11%以上かつ表示値±0.5%以内
ケイ酸塩
二酸化ケイ素(SiO2)として
62%以上かつ表示値±1%以内 13%以上かつ表示値±0.5%以内
外観および性状 無色、白色又はわずかに着色した固体状のもの 無色透明の液体 無色又はわずかに着色した固体状のもの 1種2号に同じ 1種1号に同じ 1種2号に同じ
主成分以外の金属等 ヒ素 2mg/kg以下 固形換算して1種1号に同じ 1種1号に同じ 固形換算して1種1号に同じ 1種1号に同じ 固形換算して1種1号に同じ
カドミウム 2mg/kg以下
15mg/kg以下
水銀 0.2mg/kg以下
不容分 0.05%以下
またこの品質規格の遵守については、厚生省生活衛生局企画課事務連絡(昭和59年8月27日)に示されている通り、日本給水用防錆剤協会が品質検査を行って、品質規格適合品には図−1の如き証紙を貼付し、その表示を行っている。
給水用防錆剤 図−1給水用防錆剤品質規格適合品証紙
図−1給水用防錆剤
品質規格適合品証紙

4.給水用防錆剤の作用機構

1)リン酸塩系

リン酸盤の作用機構はその主成分であるポリリン酸塩の3つの性質によって説明することができる。
・ 第1は水中でパイプの内面に生ずる鉄イオン(Fe2+)と反応して水に溶け易い錯塩を形成し赤水となるのを防ぐ作用(錯塩形成)図−2・ 第2は水中にカルシウムやマグネシウム化合物があるとこれらと反応して水に溶けないリン酸カルシウム鉄を造り、これが鉄面に沈着して皮膜を形成し腐食を防止する作用(皮膜形成)図−3
・ 第3に水中に溶け出した鉄によって生じた酸化鉄や水酸化鉄の微粒子に吸着して、それらを個々に分散させ、大きく成長するのを妨げて、水が赤くなるのを防止する作用(吸着と分散)図−4
n:整数
図−2錯塩形成
図−3被膜形成 図−4 吸着と分散

2)ケイ酸塩系

  ケイ酸塩系の作用機構は先のリン酸塩と同様、主成分であるメタ(ポリ)ケイ酸塩の3つの性質によって説明することができる。
・ 第1は水中で溶け出した鉄イオンと反応して水に溶け易い錯体を形成し、赤水の主体である水酸化鉄の生成を防止する(錯塩形成)図−2
・ 第2はメタ(ポリ)ケイ酸塩がイオン化し、あるいは会合してコロイド粒子を造り、鉄面に沈着して互いに集合;成長して非晶質の皮膜を形成し、腐食を防止する。(皮膜形成)図−3
・ 第3はメタ(ポリ)ケイ酸のコロイドがミセルを形成し、鉄面の軟らかい浮きサビを包接して水中へ取り出し赤水を防止する。(吸着と分散)図−4

5.給水用防錆剤の使い方

1)適用に当たって

建築物や各種給水施設において赤水対策として使用する給水用防錆剤は『本来水道水から供給される水は、そのままの状態を保ちながら使用者や利用者に提供することが原則であり、その間の操作は安全衛生に係わる最小限のものでなければならない』という考えに基づき抑制的に使用されるべきものであり、従ってその使用に当たっては、事前調査等周到な準備を行い、使用基準、管理基準に沿って適切な管理を行う必要がある。

2)適用範囲

赤水対策として給水用防錆剤を使用する場合、日本給水用防錆剤協会が定めた『給水用防錆剤の適用範囲』があり、これは厚生省生活衝生局企画課事務連絡(昭和61年9月30日)をもって示されている。
適用範囲
(1)給水栓から採取した水の色度が5度を超える場合で、その原因が鉄等である場合
(2)給水栓から採取した水の鉄が0.3mg/lを超える場合
(3)早朝あるいは休日明け等の開栓直後に赤水が認められ、短期間のうちに赤水領域に達すると判断される場合(注)但しこの場合初期注入は行わず当初より定常注入濃度取囲(5r/l以下)の注入を行うことを原則とする。
この(1)及び(2)はすでに赤水等がでている場合であるから、給水用防錆剤の使用開始については特に問題はない。ここで赤水等と記し、また適用範囲(1)に鉄等とあるのは、鉄以外の原因による外観異状も給水用防錆剤の適用範囲となることを意味している。(3)についても赤水の発生であることは間違いないので、給水用防錆剤の適用範囲である。ただし、この場合給水栓から赤水が見られない時間帯もあると云うことで、防錆剤を使用して良い、悪いの議論が生ずるおそれがある。しかし、この(3)のような場合は明らかに給水管の腐食が進行中であり、次第に赤水に悩まされる時間帯が長くなっていく。このような時点での防錆剤の使用は(1)、(2)の場合に比べてより高い給水管保護効果を保つことができ、その効果は定常時注入濃度で十分達成できる。なお赤水領域とは(1)、(2)の状態を指している。

3)注入方法

 給水用防錆剤はいずれも注入装置を用いて注入するが、下記表−3の如く、その形態の違いによって、液状注入と固体状注入(自然溶解)の2つの方法が定められている。液状注入は『液状の防錆剤をポンプにより給水量に応じて注入する方法』(比例注入方式)であり、これはさらにインターロック方式(図−5)と流量比例注入方式(図−6)とに分かれる。これに使用される防錆剤は、表記の如く商品形態が初めから液状のものと固体状(片状、粉状)で使用開始前に水に溶解して液状として注入するものとがある。また固体状注入は『給水配管途中にバイパスを設け、固体状の防錆剤を自然溶解させて給水量に応じて注入する方法』(バイパス方式)(図−7)であり、これに使用される固体状防錆剤には商品形態が塊状のものと球状のものとがある。
なお固体状防錆剤をカプセル、網、目ザルなどに入れて注入する『直接注入法』は使用基準に定められていない。
表−3 給水用防錆剤の形態とその注入方法
種類 有効成分及び性状、形態 注入方法
液状 固体状(塊状)
初めから液状で供給されるもの 固体状で供給され、使用開始前に溶解して注入するもの
1種 1号 リン酸塩を有効主成分とするもので、常温において塊状・片状または粉状のもの
2号 リン酸塩を有効主成分とするもので、常温において液状のもの
2種 1号 ケイ酸塩を有効主成分とするもので、常温において塊状・片状または粉状のもの
2号 ケイ酸塩を有効主成分とするもので、常温において液状のもの
3種 1号 リン酸塩及びケイ酸塩を有効主成分とするもので、常温において塊状・片状または粉状のもの
2号 リン酸塩及びケイ酸塩を有効主成分とするもので、常温において液状のもの

但し、表中○印は注入方法の適用を意味する。* 塊状には球状に成形されたものを含む。

図−5 インターロック方式 図−6 流量比例注入方式(例)
図−7 バイパス法(例)

4)使用濃度(含有率)

 国の定める使用基準では、給水用防錆剤の使用濃度を『給水栓における水に含まれる防錆剤の含有率(濃度)は、赤水等を防止し得る最低濃度とし、定常時においては、リン酸塩を主成分とするものにあっては五酸化リン(P2O5)として5mg/l、ケイ酸塩を主成分とするものにあっては二酸化ケイ素(SiO2)として5mg/l、両者の混合物を主成分とするものにあっては五酸化リン及び二酸化ケイ素の合計として5mg/lを超えてはならないこと。また注入初期においては、いずれの場合も、15mg/lを超えてはならないこと』と定めている。
 注入初期の期間は具体的に定められていないが、これは設備の状況や水質によって異なるので一概に定められるものではない。通常赤水が止まるまで初期注入をおこない以後定常注入に移るが、もし初期注入で3ヶ月を経過しても赤水が止まらない場合は、防錆剤の使用を一旦中止し、サビの洗浄を行う必要がある。

5)濃度管理

給水用の防錆剤が人体に安全で、かつ赤水等の防止に有効に作用するためには、防錆剤の濃度を適正に維持管理する必要がある。国の定める基準では『定常時においては2ヶ月以内毎に1回防錆剤の濃度を検査すること。また注入初期においては7日以内毎に1回検査すること。その方法は(社)日本水道協会の『上水試験方法』または、これと同程度以上の精度を有する方法によること』となっている。また日本給水用防錆剤協会では、これとは別に表−4の如く独自の管理基準を設けて管理を行っている。
表−4 含有率検査
基準 ビル管理法(衛企第93号)
(特定建築物)
日本給水用防錆剤協会管理基準
(すべての建築物と給水施設)
項目↓ 時期→ 初期 定常 初期 定常
濃度(mg/l) 15以下 5以下 15以下 5以下
検査回数 7日ごとに1回 2月ごとに1回 7日ごとに1回以上 2月ごとに1回以上
防錆剤納入時ごとに1回
検査方法 上水試験方法またはこれと同程度以上の精度を有する方法 同左
 また日本給水用防錆剤協会では、これと並行して防錆剤の使用を管理するものが精度よくその濃度を測定でき、その簡便さと回数において上記含有率検査を補完し、日々飲用している給水栓水中の防錆剤の含有率を知って、日常の防錆剤の使用管理を充実させるために簡易分析をすすめている。
 これには給水用防錆剤簡易分析器推奨品登録制度を設けて、規定に合格した簡易分析器を推奨している。

6)効果の確認

 給水用防錆剤の効果の判定は濃度管理と並行して行うことが望ましい。判定のための検査は、上水試験方法またはこれと同程度以上の精度を有する方法により行い、色度(5度以下)と全鉄(0.3mg/l以下)について検査する。

7)効果があらわれてからの処置

 赤水対策として給水用防錆剤の使用を開始したあとは、給水栓水における色度、全鉄等の結果をみて、できるだけ早い時期に注入濃度を定常注入濃度(5mg/l以下)に下げ、以後注入を継続するが、最終的には給水管の布設替え等の恒久対策が行われるまでの応急対策とし位置付けて使用する。

6.給水用防錆剤の安全性

1)安全性とは

@安全性試験を行う基本的な考え方
 どんな物質でも大量に摂取しすぎると何らかの障害をおこしてくる。日常用いられている砂糖や食塩でも過量では害になる。生命に欠くべからざる食塩も間隔をおいてときに量を過しても喉が少し渇く程度の症状で体外に排泄されるので問題をおこさない。しかし必要以上の量を長時間摂取し続けると、高血圧症のような病気をおこすことが知られている。
 安全性とは、食物なら日常の実用量と障害をおこす大量との関係を量と質との点で明らかにしたのち、係数のような倍数関係で安全である範囲を示すことである。医薬品でも病気を治したり予防できる量と体に障害をおこす量との関係を同様に係数で示す。医薬は医師の手で外から使用がコントロールできるから、その係数は30倍とされるが、水や植物はそれができないから100倍以上という大きい安全係数がみてある。
 安全性の意義は1回だけ摂取したときと、長年使い続けたときとでは当然異なってくる。1回では死ぬくらいの大量よりやや少ない量で何か体に異常をおこしても、その異常が永続性のあるものでなければ短期間で摂取を止めれば回復するが、同じ異常が長期間そのまま続けるように化学物質投与を続けると持ちこたえられなくなる。
 この実験をヒトで行うわけには行かないから、一度に多数入手できる動物で代用し、その結果をヒトに置き換えて考える。現在までには、これに代りうる方法は発見されていないから、安全性の第一歩はこれで予測を立てる
 水は一生飲み続けなければならない。ラットの寿命は2〜3年である。ラットの1ヶ月はヒトでは小学生の終わり、3ヶ月は30才近い大人となり、1年で50才を越え、2年で80才近くなることに相当する。したがって2年にわたって反復摂取させることを、「ヒトが大人になりかけて老人になるまでの間、続けて摂取したと同じと考えることにされている。2年間の間には化学物質をやらないでも、動物は自然にガンも発生し、老化による変化も出現し、死も発生するようになる。

A安全性を決める実験の手順
安全性は毒性学の手法と手順で決められる。1回の大量投与(急性毒性試験)で死に至る量をまず決める。これは反復投与の量を決める基準になるからである。反復投与によって全身に障害を起こすか(慢性毒性試験)、母体が摂取しても胎児に奇形が出ないか(催奇形性試験)、ガンが発生する契機にならないか(発ガン性試験、変異原性試験)を見ている。

2)給水用防錆剤の安全性について

 ヒトが飲用などの目的で利用する水の供給にあたっては外部からの微生物や毒物、劇物などの化学物質などによる汚染を予め除去する処理が必要であるが、これとは別に、給水用パイプラインに用いられる材料からの金属やその含有成分が溶出し、水質を損なってはならない。給水用防錆剤もこのような見地から選ばれる。併せて、ヒトの健康に障害を及ぼす物質をこのような目的で使用することも好ましくない。そのためには、使用に先立ってまず実験動物を用いて、毒性試験を行なって評価し、選択することで達成される。
 給水用防錆剤は、当然のことながら、劇物や毒物に分類されるものであってはならない。毒性試験には、試験に供される動物に防錆用候補物質を単回投与する急性(単回投与)毒性試験により、その動物の母集団の50%を殺すLD50(r/s)値を求める。この致死量を求めた後、物質を反復して投与した場合の亜急性又は慢性毒性試験を行なう。この場合には障害の発生部位と変化、発現時期と用量の関係を検索する。ヒトに長期間採取される物質については、ラットなどのゲッ歯類の生涯投与(約2年)を行なうガン原性試験も必要となる。生殖に及ぼす影響は、通常3種類の投与時期を変えた生殖発生毒性試験により検索される。これらを補うものとして変異原性試験も行なわれる。
 給水用防錆に用いられるポリリン酸塩、ポリケイ酸塩についても上記各種毒性試験が実施されていて、安全性に問題がないと考えられている。

毒物劇物の判定基準
 動物又はヒトの知見に基づき、その物質の物性や化学製剤としての物質なども勘案する。
動物における知見
 @急性(単回投与)毒性
  (a)経口 毒物 : LD50が30r/s以下のもの
        劇物 : LD50が30r/sを超え300r/s以下のもの
  (b)経皮 毒物 : LD50が100r/s以下のもの
        劇物 : LD50が100r/sを超え1,000r/s以下のもの
  (c)吸入(ガス) 毒物:LC50)が500ppm(4hr)以下のもの
             劇物:LC50が500ppm(4hr)を超え2,500ppm(4hr)以下のもの
        (蒸気) 毒物:LC50が2.0r/l(4hr)以下のもの
             劇物:LC50が2.0r/l(4hr)を超え10r/l(4hr)以下のもの
   (ダスト、ミスト) 毒物:LC50が0.5r/l(4hr)以下のもの
              劇物:LC50が0.5r/l(4hr)を超え1.0r/l(4hr)以下のもの
  (d)その他 
        注)LC50):試験動物母集団の50%を殺すに要する濃度
 A皮膚・粘膜に対する刺激性
   劇物に分類されているものに、硫酸、水酸化ナトリウム、フェノールなどと同等以上の刺激性を有するものなどがある。

3)ポリリン酸ナトリウムとポリケイ酸ナトリウムの安全性のあらまし

給水用防錆剤に使用されるポリリン酸ナトリウム(ポリリン酸)およびポリケイ酸ナトリウム(ポリケイ酸)の各種毒性試験が実施され、安全性に問題がないと考えられている。その安全性は、催奇形性、発ガン怯、変異原性は認められず、2年間の慢性毒性から、ポリリン酸は20,000mg/l(750mg/s/day)と推定された。ポリケイ酸は1500mg/l(79.2mg/s/day)である。

4)ポリリン酸のラットにおける急性および慢性毒性試験

ポリリン酸の急性毒性を調べ、次いで20,000、5,000、1,000mg/lの各濃度を水道水中に溶解し、常時飲水可能の給水ビンに入れ、自由頼取させて、両性のラットの急性および慢性毒性試験を行い、その安全性を調べた。
@急性毒性
 大量群ではふるえ、間代性痙攣を起こしたのち、呼吸麻痺による死がみられた。中量群では投与初期からうずくまり、自然運動の抑制、眼瞼下垂ののち、鎮静がみられた。下痢は初期にみられた。死亡例の剖検では、胃、十二指腸の出血がみられた。LD50は雄3.053(2,922〜3,191)、雌3,263(3,124〜3,409)、r/s〔マウスのLD50は雄7,572(7,009〜8,180)、雌9,973(9,117〜10,476)r/s〕
A慢性毒性
 実験初期に20,000、5,000mg/lで軟便、下痢症状、20,000、5,000mg/l雄で体重増加の抑制がみられた他は、一般症状、体重、飼料効率、尿には変化はなかった。24ヶ月に至るまでの、血液学的、生化学的所見、病理組織学的所見には、ポリリン酸に限定できる特異的なものはなく、用量反応性のない散発的なものであった。ポリリン酸の安全量が20,000mg/l(750mg/s/day)であるから、使用開始時の最高使用濃度15mg/lでは1,000〜1,500倍、定常時濃度5mg/lでは3,000〜4,500倍の安全係数をもつ。

5)ポリケイ酸ナトリウム(ポリケイ酸)のラットによる急性および慢性毒性試験

ポリケイ酸の急性毒性を調べ、次いで1,500,500,167mg/lの各濃度を水道水中に溶解し、常時飲水可能の吸水ビンに入れ、 自由摂取させて両性ラットの急性および慢性毒性試験を行い その安全性を調べた。
@急性毒性
 大量群では鎮静、間代性痙攣、強直性痙攣ののち、呼吸麻痺による死がみられた。死亡例の剖検では、胃、十二指腸の出血がみられた。LD50は雄1,153(995〜1,339)雌1,349(1,189〜1,530)r/s〔マウスのLD50は雄820(667〜1,087)雌770(660〜896)mg/s〕
A慢性毒性
 ポリケイ酸のラットによる慢性毒性試験において、各一般症状、体重、死、飼料効率、尿所見、血液学的、生化学的所見、湿器官重量および病理組織学的所見には、ポリケイ酸による特異的な変化はみられなかった。より高用量による亜急性毒性では腎尿細管上皮の変性が散見された。ポリケイ酸の安全量は1,500mg/l(79.2mg/s/day)であるから、使用開始時の最高使用濃度15mg/lでは106〜158倍、定常時濃度5mg/lでは318〜475倍の安全係数をもつ。

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協会について会則赤水対策/給水用防錆剤について/簡易分析器講習会情報会員広場事務局より
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